人の欲が執着となり業が宿る時

幽霊画を見て落語のネタを仕入れて、曜変天目茶碗をみて度肝を抜かれて参りました。

6月からここんとこピリピリしている毎日ですが、15日までうちの師匠が出かけているのでこれ幸いと、小休止を兼ねて全生庵の「幽霊画展」とサントリー美術館で展示中の「曜変天目茶碗」を観に行くことにしました。

同行していただいたのは、数少ない(というかひとりだけ)落語女子のNさん。
うちの師匠のプロデューサーさんでもあります。
谷中周辺に滅法強くて頼りになって、伝統芸能に造詣が深いという、落語女子の見本のような女性です。
前から全生庵の幽霊画展にはお誘いいただいて、一度は観なければ落女がすたるぜと気になっていました(すたって惜しいものでもない)。

幽霊画を観てから曜変天目茶碗を観るという、はしごスケジュール。
なぜ曜変天目茶碗を見たかったのかというと、今書いているのが「贋作陶工師」のお話でありまして、贋作と本物、その違いはなんなのかってことと、国家予算並みな美術品に視えるものはなんだろうかと興味が出た矢先、やきものの最高峰で国宝の「曜変天目茶碗」が六本木で見られるという、ラッキーな事態になったからです。

幽霊画に隠されたストーリー

全生庵には山岡鉄舟と、江戸落語の大名人三遊亭円朝のお墓があります。
三遊亭円朝とは、江戸時代末期の噺家。現在演じられている古典の中の人情噺や怪談の多くは三遊亭円朝が創作した噺です。
あまりに人気があったため、その人気に嫉妬した他の噺家に毒殺されないように、マイ急須とマイ湯呑みを持ち歩いていたと言います。

その三遊亭円朝が集めていたという幽霊画。
その管理をしているのが全生庵ということで、8月の円朝まつりの期間中、幽霊画を虫干し兼ねて展示しているそうでございます。

「もうね、すごいのよーーー。ぞくぞくってするんだからーー」
と、Nさんは脅してくれたのですが、わたしの狙いは「ネタになるのはいねがーー」。
のっけから見つけたのが円朝作「乳房榎」の一節を描いた幽霊画。
「ふおおお!これ、乳房榎だよ!うわああああすごーーーい本物だあああああありがたやありがたや」
こんな調子で見ていきます。

幽霊画のモチーフは、断然「女」。
「恨みはらさでおくべきか」と、目に怨念を宿しドロドロ今まさに出やんとしているものや、反対に、無意識なのか情念が残るものが形となったのか、ただそこにひっそりと佇む霊魂を描いたものもあります。

どっちが怖いかというと、そりゃ後者ですね。
蚊帳の向こうにはどこを見るでもなく表情はわからない、ひたひたと冷たい気配と影。
そこに居てはいけない、見てはならない蚊帳の向こうの黄泉の世界。
そんなんが起きた時に向こうにいたら、間違いなく腰抜かします。

どうしても気になったのが、幽霊なんだか妖怪なんだかわからない向こうが透けてるぬらりひょん的な坊さんが、尺八を持って水辺に浮かんでいる画。

散々悪いことをして上方から江戸に流れてきてニセ坊主をやってる盗人の男が、商売道具の尺八を川に落としてしまう。
すると川の中からぬらりひょん的な坊主が出てきて問う。
ぬらりひょん「お前が落としたのは金の尺八か銀の尺八か、それともこの小汚い尺八か」
泥棒「俺のは金だ!金の尺八に間違いねえ。その金の尺八をよこしやがれ」
ぬ「(金と銀の尺八を懐にしまって落とした尺八を恭しく掲げ)お前にこれを、やろう。」
泥「そりゃ最初っから俺んじゃねえか!」
ぬ「お前はここに尺八を落っことしたろう。それをわしが拾った。おめえは金の尺八が自分のだって言うからな、この尺八は、俺んだ」
泥「そうかなあ!!」

って、ここまで考えた。(ほんとのストーリーは知りません)

娘がいうことには、「それしってる!そのじいさん妖怪!海から出てくるだけで、何もしないの!」だそうです。
知っている方がいたら教えてください。

幽霊画を観てから、三遊亭円朝のお墓参りをしました。
手ぶらですみませんでした。

31日まで円朝まつりの期間中は公開しているそうです。
暑い夏には全生庵の幽霊画展はいかがでしょう。
冷房以上に涼しくなれます。

人の欲が執着となり業が宿る時 (曜変天目茶碗編)へつづきますヽ(∀・ヽ)(ノ・∀)ノ 。