ひとりで行けるもん!各所の寄席特徴

アニメ「落語心中」のヒットにより、落語ファンの女子が増えたそうです。しかし、うちのところでは一向にその恩恵を賜っておりません。どこに行けば落語女子に会えますか。
きっと、落語初心者女子はシャイだから、寄席に行けずにモジモジしているのかもしれない。そんな、楽観的希望の元、落語初心者女子が明日から大手を振ってひとりで寄席に行けるように、知っておくと心の準備ができるかもしれない寄席別の特徴について書きましたので、大いに参考にしてください(ドヤ顔)。

寄席とは何か

寄席は落語や講談、浪曲などを演じる噺家や演者が集まり、演じる場所です。現在では、通常「寄席」というと落語を行う場所として定着しています。
都内では「定席」という、年間通じて昼席・夜席を行なっている、末廣亭・鈴本演芸場・浅草演芸ホール・池袋演芸場があります。年間通じてではないですが、毎月定期的に寄席興行を行っているお江戸広小路亭の「しのばず寄席」、お江戸両国亭で五代目圓楽一門会が行っている「両国寄席」、国立演芸場の定席があります。

国立演芸場の定席以外は予約なしで入ることができます。もともと寄席とは、好きなときに入って好きなときに出て行っても良いという、とてもフランクな場所です。入ってしまえば緊張していたのがバカバカしくなるくらい、なんてことない空間です。寝ている人もいます。
ただし、寝ている人は高座から目立つので、できれば寝ないでいていただくと、噺家が不安にならなくてすみます。

ドレスコードも必要ありません。歌舞伎座のように、紬の着物で行ったらお直しおばさんにお小言をいただくということもありません。
両国寄席には、ランニング姿でやってくるお客様もいらっしゃいます。主にうちの噺家のファンです。もちろん仕事帰りの方もいらっしゃいます。

「今日、寄席でも行くか」と思い立ったときに、美術館より映画館より何にも考えずに行けるのが「寄席」なのです。

寄席にするか落語会(独演会)にするか

漫画「落語心中」など、漫画や小説、映画などで既に気になる演目があり、その演目が目当てなら独演会が良いでしょう。
多くの独演会は、演目を事前に決めています。「芝浜」「死神」「明烏」など、大根多は見付やすいでしょう。

しかし、大根多は季節によるものも多く、聴きたいときにお目当ての噺の季節ではないことがあります。「芝浜」は年末、「死神」は夏などです。
そういう時は、寄席に行ってみましょう。

寄席では、演目は決まっていません。前座からトリの真打まで、違う系統の違う根多をかけることがしきたりで、その日の演目はその日その時に決まります。
高座に上がる噺家は、今日自分の前の演者は何をかけたのかを、根多帳を見て確認し、自分の根多を決めます。
ベテランになると、トリの師匠が何をやるのかを予測して、付かない(同じ系統の噺が被らないこと)噺をかけます。

寄席の醍醐味は、この緊張感と様々な演目が聴けること。
大根多以外にも、落語には多くの噺があります。落語家もたくさんいます。
寄席で「このひと好き!」という噺家を見つけることも、楽しみのひとつ。
初心者さんこそ、寄席で落語ファンデビューをおすすめします。

どこに行こうか寄席比較

決心が固まったところで、どこの寄席に行こうかしらと悩みます。
各寄席の番組表を見ても、誰がどなたなのかさっぱりわかりません。わかるのは笑点メンバーが居るか居ないかくらいでしょう。

そこで、各寄席の特徴を簡単にまとめました。
櫻庭独自の印象です。しかも、身内につき五代目圓楽一門会推しですので、事情を鑑みた上で参考にしてください。

末廣亭

新宿にある、最も寄席らしい趣のある建物。「落語心中」に出てくる寄席のモデルにもなっているのではないでしょうか。
桟敷席では、お弁当を食べながら聴くこともできます。映画「しゃべれどもしゃべれども」にも出ています。
落語協会と落語芸術協会の交互出演。高座時間は短め。かかる噺もスタンダードな古典や新作が多く、初心者でも楽しめます。
最近は、落語ブームにより女性の行列ができているようです。うらやましす。

鈴本演芸場

落語協会オンリーの寄席です。上野にあります。かなり入りにくい雰囲気且つ、わかりにくいです。建物は大きいのですが。
間違えてお江戸広小路亭に入ってしまう方も多いのですが、上野駅に近いご立派なビルの方です。
前座さんが、一番太鼓を叩いているのを見ることができるので、ぜひ開場時間に行ってみてください。高座時間は15分くらいで若干短め。今は旬の人気噺家がたくさん出演します。
イケメン噺家を探したいなら、鈴本演芸場がよいでしょう。

浅草演芸ホール

都内唯一呼び込みのお兄さんが居る寄席。場所も浅草とあって、観光客で賑わっています。
近くのお弁当屋さん「ぱくぱく」はとても安くて美味しいので、お弁当を買うならぜひこちらで。「飲酒はお断り」とありますが、演芸ホール内にはビールの自販機があります。問題ないようです。
二階席には、非常に高座が見えにくい謎の桟敷席があります。
夏休みには、落語芸術協会の笑点メンバー小遊三師匠と昇太師匠の「にゅーおいらんず」、落語協会の「かっぽれ」など、催し物も賑やか。着物を着ていくと割引も。浴衣はNGです。
休日に行くのなら、浅草演芸ホールがおすすめです。

池袋演芸場

元々は、畳部屋に座布団を自分で敷いて聴くという寂れた寄席でしたが、綺麗に立派にリニューアル。客席が事務椅子なのが謎です。
地上の薄暗いテケツで木戸銭を払い、地下へと降ります。もうこの時点で怪しいです。
落語協会と落語芸術協会が交互で出演していますが、末廣亭や浅草演芸ホールに出ていない噺家も多く出演していて、隠れた穴場です。実際隠れています。
トイレのすぐ横が楽屋で、喫煙所では噺家もお客と一緒に喫煙しているので、トイレに行くときに「あ、師匠だ」ってことに遭遇できます。
楽屋はとても狭いため、出演が終わった噺家はすぐに帰ります。出入り口はお客様と一緒です。お目当ての噺家にどうしても遭遇したいのなら、池袋演芸場がおすすめです。

お江戸広小路亭しのばず寄席

永谷商事が席亭を務める、知っている人は知っている曰く付きの寄席。鈴本演芸場と間違えて入って来るお客様が多いので、高座にあがる噺家も「本日はいっぱいのお運びで…。ま、もっとも隣の鈴本と間違えて来ちゃったってのもいらっしゃるんでございましょうが」とネタにします。
立川流や五代目圓楽一門会、講談、浪曲など、定席には出演しない芸人を中心とした寄席のため、落語通にはたまらない空間です。
会場は80人でいっぱい、マイクを使わない生声で落語が聴けます。尺は20分から30分とたっぷり。定席では聴けない根多もたくさんかけられます。
落語を極めたいのなら、しのばず寄席へ。

お江戸両国亭 両国寄席

五代目圓楽一門会の自主興行寄席。なぜ自主興行寄席なのか、その顛末はそのうち書きます。
五代目圓楽が、寄席若竹を閉めてから生まれた寄席で、地元の皆様にも愛され、すっかりおなじみの定席となりました。
出演は、五代目圓楽一門会の他に、色物、芸協や協会、立川流からゲストを呼んでの多彩な顔ぶれ。笑点メンバーの好楽師匠、六代目圓楽師匠も出演します。
両国寄席の一番の特徴は、かける根多。自主興行ということもあり、演じることを自粛されている噺や、放送禁止用語を当時のまま話すなど、都内定席では絶対にかからない噺が聴けます。
そして、演者と客席の近さ(狭いとも言う)。すぐそこで六代目圓楽師匠の「猫の皿」を聴くことができます。しかも生声。
寄席がはねた後で外に出ると、噺家が外に出てトリの師匠を見送る場面に遭遇できます。ヤのつく自由業の方々のようにも見えます。わたしは慣れました。
開場時間には、前座さんが一番太鼓を外で叩いているのを見ることができます。受付も前座さんが務めています。
客席は、常連とご贔屓さんが大半を占めていますが、初めての女性客が入ると、会場は浮き足立ちます。枕で落語初心者向けの説明までしてくれます。
初心者さんにも優しく、落語通も通う両国亭。落語初心者女子を精一杯おもてなしの心でお待ちしています。

国立演芸場

隣は歌舞伎も行う国立劇場。しかし、落語は国立演芸場です。おハイソな奥様方が劇場へ向かうのを横目に演芸場へ向かいます。
国立というだけあって、寄席なのに完全予約制。座席指定までします。
床は赤い絨毯です。ふわふわです。演芸場内では、扉の前できちんとスタッフが座って監視しています。たまに中の高座を聴いて笑ってます。人間だもの。
夏は桂歌丸師匠が圓朝噺を連夜行うことでも有名。立川流や圓楽一門会も出演、定席にあまり出ない協会や芸協の噺家も多く出演します。
歌丸師匠出演以外は大概空いているので、前日予約でも大丈夫。トイレの数が少ないのが要注意ですが、他はどこも綺麗できちんとしています。客席シートも立派です。
きちんと綺麗な会場で落語を聴きたいなら国立演芸場へ。


寄席の席亭さんによって、出演する噺家は何となく決まっています。贔屓の噺家ができると、自ずとその寄席に行くようになるでしょう。

まだ贔屓さんが見つからないという方は、どんどんいろんな寄席に出かけてみてください。
贔屓さんが見つからない時期は、落語自体を寄席で純粋に愉しめる貴重な時間。
いろんなところに行って楽しまなくちゃ、もったいないですよ。