記事一覧 | 江戸文化・落語ライター櫻庭由紀子 http://sakurabayukiko.net 落語と江戸文化・芸能の薀蓄メディア Sat, 25 Mar 2023 14:32:42 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.7.11 http://sakurabayukiko.net/sakura/wp-content/uploads/2017/07/11140334_1073230532722086_2070346371335027197_n-100x100.jpg 記事一覧 | 江戸文化・落語ライター櫻庭由紀子 http://sakurabayukiko.net 32 32 ブログ非公開にしました http://sakurabayukiko.net/2023/03/25/%e3%83%96%e3%83%ad%e3%82%b0%e9%9d%9e%e5%85%ac%e9%96%8b%e3%81%ab%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=%25e3%2583%2596%25e3%2583%25ad%25e3%2582%25b0%25e9%259d%259e%25e5%2585%25ac%25e9%2596%258b%25e3%2581%25ab%25e3%2581%2597%25e3%2581%25be%25e3%2581%2597%25e3%2581%259f Sat, 25 Mar 2023 14:22:48 +0000 http://sakurabayukiko.net/?p=971 一昨年に初めての書籍を出してから世の中が大きく変化し、今はAIが恐ろしく流ちょうに文章を生成したり絵を出力したりしてくる。 なんでも、その学習元がネットに上がっている文章だったりイラストだったりするそうで、我々がネット上...

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一昨年に初めての書籍を出してから世の中が大きく変化し、今はAIが恐ろしく流ちょうに文章を生成したり絵を出力したりしてくる。

なんでも、その学習元がネットに上がっている文章だったりイラストだったりするそうで、我々がネット上で知識なり技術なりを出したものを喰ってAIが日々成長しているらしい。

んで、そのAIを使った文章やイラストで報酬を得ている層が出ているとのこと。

この先、AIがどういう使われ方をしていくかはわからないが、我々の仕事の一部分、または大部分がAIに取って代わるだろうとは言われている。

だがしかし、そんな世の中のためにこっちはネットに文章をアップしているわけではないし、資料を読んでうんうんものを考えているわけでもない。

大雑把に言えば、AIに喰わせるネタはねえってことだ。

というわけで、今後のことも考えて、サイトに公開していた一部記事(大部分だけど)を非公開にしました。

今後こちらで書く記事も、新刊でましたとか、今忙しいですとか、暇になりましたとか、落語会やってますとか行ってきましたとか、どこそこのご飯が美味しかったですとか、そんな話題になるかと思われます。

ウェブメディアで執筆したものは、原稿料いただいているのでそのままです。
原稿料いただいて執筆するウェブメディアへの執筆は、紙媒体も合わせて今後も続けてまいります。

このサイトでの情報公開は、今後は積極的に行わない、ということです。ご時世も鑑みてご了承ください。

落語の蘊蓄とか歴史とか裏話的なものに関しては
「落語家の女房が語る落語案内帖」(笠間書院)
「イチから知りたい 日本のすごい伝統文化 絵で見て楽しい!はじめての落語」(すばる舎)

演芸・芸能でみる江戸の怪異考察は
「江戸の怪談がいかにして歌舞伎や落語の名作となったか」(笠間書院)

に、これまでのブログの記事も含めて書いたのでそちらを参照いただきたく、お願いします。電子書籍もあります。

江戸の職業、芸能・文化のビジネス寄りの考察は、現在2冊ほど執筆中です。発売となったらこちらで紹介します。

本日は、ここまで。

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執筆の進捗状況 http://sakurabayukiko.net/2022/05/01/shintyoku/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=shintyoku Sat, 30 Apr 2022 17:20:04 +0000 http://sakurabayukiko.net/?p=935 ここ最近、6月出版(多分)の書籍に知識の全てをつぎ込んでいたので、ここに書けるものが何ひとつなかった。そして今もない。今入れている知識は別のところで連載開始だし、落語布教本は学童向けに企画段階に入っている。 執筆予定のい...

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ここ最近、6月出版(多分)の書籍に知識の全てをつぎ込んでいたので、ここに書けるものが何ひとつなかった。そして今もない。今入れている知識は別のところで連載開始だし、落語布教本は学童向けに企画段階に入っている。

執筆予定のいくつかのメディアと出版社のお仕事を進めながら、どうしても研究&発信したいことがある。落語の演目の系譜を速記技術が始まった明治から昭和まで辿りたい。
これは、前から考えていて進めてはいるのだが、なにしろ大量だし、速記は見つからないし、噺家によって言ってることは違うしで、なかなか手ごわい。

しかし、三遊派の噺だけでもやっておきたい。
というのは、楽松が新しい噺を稽古に入るたびに「これは、なぜこうなるのだろう、時代はいつだろう、云々」と悩み始める。こっちはある程度時代考証できる知識は持っているので、よくよく聴いてみると「時代がテレコになってるな…」と感じることがある。多分、誰か師匠に稽古してもらった後、自分なりに深めていく過程で他の演者の影響を受けたりして変化していったのだろう。

名人、名演と言われる高座が、いつ、どこで、どのように演じられていったのか。落語は生きている。進化もしている。先人たちが積み重ねた噺の歴史を解き明かしたい。
まあ言うなれば、ほぼ私の趣味です。

この研究をしながら決まっている執筆をしていくのだが、実はいくつか企画も持っている。
本書く度に書ききれなかったことが出てしまうので、覚書として手が空いたらサイトかnoteに書いていこうと思う。

本も溢れているので、どうにかせねばならん。
布団の周りが本だらけで、そろそろ人間が寝られぬ。

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謹賀新年2022 http://sakurabayukiko.net/2022/01/02/new2022/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=new2022 Sun, 02 Jan 2022 06:07:01 +0000 http://sakurabayukiko.net/?p=868 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 というわけで、年が明けてしまった。原稿が書けていない。5日納品の原稿がわんさとある。休み中に絶対に書いておけよ、と言い残しサラリーマンは正月休みに入ってい...

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明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

というわけで、年が明けてしまった。
原稿が書けていない。5日納品の原稿がわんさとある。休み中に絶対に書いておけよ、と言い残しサラリーマンは正月休みに入っている。
いや、休み中に書きますから年内納期は勘弁してと、泣きながら土下座したのは私なのだが。

近所の氏神様では、昨年はコロナ禍でお札や破魔矢の頒布はなかったのだが、今年は復活していて幾分賑やかだった。「ゆく年くる年」を観終わったであろう近所の人々が、氏神様に家族で現れて新年のあいさつを交わす光景は、良いものだ。

昨日は両国寄席の初席に行った。
赤い顔でご機嫌の楽松の弟弟子と話をして安心する。しっかり食べて飲んで落語がんばれ。

私も原稿がんばる。
第一章のボリュームが減らせず頭を抱えている。

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大晦日の夜 http://sakurabayukiko.net/2021/12/31/misoka/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=misoka Fri, 31 Dec 2021 08:34:53 +0000 http://sakurabayukiko.net/?p=863 大晦日と言っても、子どもたちは独立してめいめいに過ごしているし、私は年中原稿に追われているし、楽松は正月から寄席だしで、うちにとって大晦日は、過ぎ行く日々の中の1日である。 正月は、寄席ではみなさん飲んだくれていて、贔屓...

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大晦日と言っても、子どもたちは独立してめいめいに過ごしているし、私は年中原稿に追われているし、楽松は正月から寄席だしで、うちにとって大晦日は、過ぎ行く日々の中の1日である。

正月は、寄席ではみなさん飲んだくれていて、贔屓様もいらっしゃり賑やかで、なんとなく晴れやかであり、あの雰囲気はとても好きだ。そうであっても、大晦日は正月の前日であり、今もこうして、資料読んで見出し構成している息抜きに、日記など書いている。

昨年は年末に本を出して、出版に係る忙しさがあったが、今年は来年出版予定の原稿を死に物狂いで書かねばならないので、焦燥感半端ない。心が忙しいというのだろうか。
だったら早よ書けというところなのだけど、うまくいかないものですなあ。

昨年の初めに買った、江戸期のエロ本全集をまったく読めないまま年を越そうとしている。
なぜエロ本なのかというと、エロとグロと怪異には、民衆の思想が詰まっているからと信じているからである。

サブカルにはその時代の叫びがある。
そう信じて艶雑譚を集めた秘本を入手したのだが、ほぼほぼ読めていない。来年こそは時代背景や流行を絡めながらいろいろと知識をつけたい。

落語速記も読みたい。現在の演じ方との違いや当時の事件や流行、思想と絡めて読みたい。
しかしこれらは、執筆を終えねば手が付けられない。出版を終えてからの夏以降の楽しみにしておこう。(去年もそうやって速記もエロ本も読めなかった)

楽松が、夕ご飯は鍋で、蕎麦を食べたら近所の神社に行くよと言いに来た。
来年も、よろず上手く回りますように。

 

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クリスマスの次の日 http://sakurabayukiko.net/2021/12/26/dy1/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=dy1 Sun, 26 Dec 2021 11:47:54 +0000 http://sakurabayukiko.net/?p=858 業務委託先の仕事がどうにかなりそうなので、ほっとした途端疲れが出て、金曜日から土曜日の間、寝呆けた。24日と25日、つまりイブとクリスマス当日は寝て過ごしたことになる。夜更け過ぎにどうにもなることなく、起きたら寒い26日...

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業務委託先の仕事がどうにかなりそうなので、ほっとした途端疲れが出て、金曜日から土曜日の間、寝呆けた。24日と25日、つまりイブとクリスマス当日は寝て過ごしたことになる。夜更け過ぎにどうにもなることなく、起きたら寒い26日未明だった。年を取るとこんなものである。

今日は、論文を何本か読んで見出しを作成した。年内に上げなくてはならない仕事を明日で終わらせねばならぬ。しかし、明日は夕方に打ち合わせ的な予定が入っている。どうにもうまく事が進まない。

隣家の大家さんと仲良くなって、家の安い買い方を伝授してもらった。
しかし、北海道に実家があるし楽松の方は郷里に家が2軒もある。

しばらくは、少なくとも10年は、私も楽松も東京で仕事をせねばならんだろう。江戸落語家だし、私も執筆業となると都内に近い方が有利だ。出版社の99%は東京にある。資料を入手するにも、思い立ったらすぐに生の芸能に触れることができることは大きい。
寄席や歌舞伎座、国会図書館に思い立ったら行けるという特権は、やはり捨てがたい。

そう考えると、東京で家を持っていた方がよいだろうかとも思う。
大量の資料の置き場所も考えねばならぬ。
芸能のレコードやらカセットやらも保存を考えねばならぬ。

私は、実家との様々な事情により親とは縁薄く帰ることができない。
そう決意して北海道から出て30年経っているのだが、メンタル的にどうにかなるものかとあの頃少し心配していたが、心配してたメンタル的なものは特にないまま50歳を過ぎ(実家は妹がどうにかするだろし)、喫緊の課題は、芸能や執筆の資料の置き場所をどうにかせねばならん問題だった。

年を取るということは、そんなものかもしれない。
今日もうちの本棚は密に充ちている。

 

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亀戸梅屋敷で江戸時代にタイムスリップ!地元の人々で賑わう寄席も人気 http://sakurabayukiko.net/2019/02/10/kameido-umeyashiki/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=kameido-umeyashiki Sun, 10 Feb 2019 08:10:48 +0000 http://sakurabayukiko.net/?p=642 亀戸駅から徒歩7分、観光案内、江戸アンテナショップ、地元民のコミュニティスペースとしてすっかりおなじみになっているのが、亀戸梅屋敷だ。ショップには亀戸の名産や和小物が並び、奥では伝統工芸である江戸切子の作品をみることがで...

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亀戸駅から徒歩7分、観光案内、江戸アンテナショップ、地元民のコミュニティスペースとしてすっかりおなじみになっているのが、亀戸梅屋敷だ。ショップには亀戸の名産や和小物が並び、奥では伝統工芸である江戸切子の作品をみることができる。

コミュニティスペースには亀戸を描いた浮世絵があり、イベントスペースでは五代目円楽一門会による寄席が行われている。野外では定期的に様々なイベントが行われ、地元の人々はもちろん、観光客も訪れ、土日や祝日となるとたくさんの人々で賑わう亀戸のランドマーク的存在だ。

亀戸梅屋敷のいわれは、江戸時代にさかのぼる。亀戸には呉服商・伊勢屋(いせや)彦右衛門(ひこうえもん)の別荘「清香庵(せいきょうあん)」があり、 その庭の梅が大変に見事であることで名を知られていた。八代将軍徳川吉宗は鷹狩の帰りにこの地を訪れ、梅の美しさを絶賛していたという。当時の様子は、歌川広重の錦絵「名所江戸百景」の中の「亀戸梅屋敷」に描かれ、その大胆な構図と芸術性に影響を受けたゴッホが模写したことは有名だ。

現在、その地は亀戸梅屋敷跡として現在の亀戸3-40、50~53付近、亀戸天神の裏手に残されている。

現在の亀戸梅屋敷は、江戸本所の歴史と文化の拠点を目指し、2013年にオープン。目玉のひとつが、江東区に縁がある五代目圓楽一門会が主催する寄席と落語会だ。寄席は平日の昼間に行われ、笑点でおなじみの六代目三遊亭円楽、三遊亭好楽、若手で人気の三遊亭兼好、三遊亭萬橘も出演するコアな寄席だ。なんと木戸銭は1000円。何度か存続の危機に見舞われたらしいが、今ではすっかり地域に根ざした寄席となっている。

また、月に一度、一門のベテラン真打三遊亭楽松が率いる前座の落語学習会「楽集会」が行われる。普段できない大根多をかけることを許されている会で、常連の八百屋のお母さん(92)は「毎回とても楽しみ。ここに来ると元気が出るからね、まだまだ店やれるのよ」と笑う。

取材時は、ちょうど前座・三遊亭栄豊満(えいとまん)さんの「二ツ目昇進前夜祭」。楽集会が始まって初めての「卒業生」だ。「ここでたくさんの良いお客様に笑ってもらって、勉強させていただきました。でも、これからが本番。がんばります!」と笑顔で語っていた。

ショップでは、亀戸の「亀」や亀戸大根をかたどった煎餅、勝負の神様として有名な亀戸香取神社の勝ちを呼ぶ水「勝矢水」など、銘菓や名産を購入することができる。コミュニティスペース「こみゅにてぃ喫茶室」では、浮世絵や江戸切子をみながらコーヒーや菓子で休憩することも可能。少し足を延ばすと亀戸天神があり、亀戸七福神めぐりの休憩場所としても最適だ。

広重が絵に残し、将軍吉宗が絶賛したという江戸名所・亀戸梅屋敷。歴史に想いを馳せながら、立ち寄ってみてはいかがだろう。

亀戸梅屋敷

東京都江東区亀戸4丁目18−8
営業時間:10:00 – 18:00

9:30 – 17:30(冬季)

定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)


※この記事は、一般社団法人日本地域振興新聞社発行「江東区新聞」2018年11月号1面に櫻庭が執筆したものです。
公開の経緯については、こちらの記事をご覧ください。


 

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落語を聴きながらちょいと一杯 新橋の老舗「北海道料理炉ばた」の粋な夜 http://sakurabayukiko.net/2019/02/10/shinbashirobata/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=shinbashirobata Sun, 10 Feb 2019 03:24:28 +0000 http://sakurabayukiko.net/?p=612 カウンターの中にある座敷には座布団がひとつ。出囃子が鳴って噺家が上がり、正面を切ったその瞬間、飲み客たちはその高座に引き込まれた。 ビジネスマンの街、新橋。創業昭和45年の老舗「北海道料理炉ばた」では、毎週火曜日と土曜日...

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カウンターの中にある座敷には座布団がひとつ。出囃子が鳴って噺家が上がり、正面を切ったその瞬間、飲み客たちはその高座に引き込まれた。

ビジネスマンの街、新橋。創業昭和45年の老舗「北海道料理炉ばた」では、毎週火曜日と土曜日に「炉ばた寄席」が開かれている。飲み代だけで落語が楽しめるとあり、古くからのお得意様も多い。初めて落語を聴くという客は「落語が聴けるなんてびっくり。迫力がすごい」と目を丸くしていた。

同店で寄席が始まったのは、創業と同年だ。

「店を開いて、秋くらいだったかしら。前座の朝治さん(現三遊亭円橘)が裏口からやってきて、タダで良いのでここで落語をさせてくださいって言ったのよ」と、女将の伊林登美子さんは振り返る。

こうして、円楽一門会の大御所となる朝治(現三遊亭円橘)、後に笑点で人気者となる林家九蔵(現三遊亭好楽)、五代目円楽の総領弟子であり現在では円熟の芸を聴かせる三遊亭鳳楽の「新橋三羽烏」で、炉ばた寄席は始まった。
以来48年間、寄席は毎週欠かさず行われ、現在に至るまでその回数は5000回を超える。

三羽烏は真打になるまで新橋の客を笑わせ続け、現在の座長は三羽烏・鳳楽大師匠の総領弟子、三遊亭楽松さんだ。
前座時代から出演し、座長となってからは25年間炉ばた寄席の番組を組んでいる。

ほろ酔いが心地よい19時30分、「今日の出演は三遊亭楽松です」と声がかかり、噺家が高座に上がる。今日の演目は、江戸時代に名工と謳われた左甚五郎の人情噺「ねずみ」だ。
話がクライマックスに入ると観客は固唾を飲み、サゲではワッという声と拍手が沸き起こる。

48年5000回の間には、若手から大御所まで様々な噺家たちが炉ばたの高座に上がった。笑点メンバーの林家木久扇に林家こん平、若手噺家であった頃の柳家小三治、「世話になっているから」と先代の柳家小さん大師匠が上がったこともある。

女将である登美子さんが「忘れられない」という高座は、故五代目圓楽大師匠の「芝浜」だ。

「まだ“星の王子様”と呼ばれている頃でね。自分でも泣きながら演って、お客も一体になって聴き入って、本当にすごかった。引退した時も「芝浜」だったから、あの時の「芝浜」で勇退したんだなって思ってねえ」と振り返る。

天井近くの壁にかけられている茶色くなった根多帳には、45年の演目全てが記されている。その歴史を見守るのは、炉ばた寄席を始めた五代目円楽一門会の大師匠である故三遊亭圓生の写真だ。
「ここは落語を聴く場所ではなくて、酒を飲む場所。ここのお客様の前で落語できたら、怖いもの無し」と座長の楽松さんが笑う。

落語の他にお得意さん達が楽しみにしているのは、エビスビールと出汁が絶品の特製おでん。お酒なら北海道の本醸造生貯蔵酒「大雪の蔵」。口当たりがやわらかくフルーティーな残り香は女性にも人気だ。
アスパラベーコンにじゃがバター、氷下魚(こまい)など北海道ならではの料理に、客たちの酒も進む。
落語を聴いてさっと帰るのもよし、じっくり語り合いながら飲むのもよし。どんな飲み方にも寄り添う、粋な大人の空間だ。

「本当に、いろんな噺家さんたちが来て喋って行ったわねえ」と女将は振り返る。
落語と酒と美味しい肴。今日も新橋炉ばたには、憩いと笑いを求めた人々がやってくる。

北海道料理 炉ばた

住所・港区新橋4−15−1

☎︎03(3433)7655
営業時間・月~金PM5時~PM11時30分(フードL.O.PM10時45分、ドリンクPM11時)
土PM5時~PM11時(フードL.O.PM10時15分、ドリンクPM10時30分)
日、祝祭日PM5時~PM10時(フードL.O.PM9時15分、ドリンクPM9時30分)

炉ばた寄席:毎週火曜日・土曜日 PM7時30分頃から
木戸銭:食事代のみ


※この記事は、一般社団法人日本地域振興新聞社発行「港区新聞」2018年10月号1面に櫻庭が執筆したものです。


 

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着物でGO!寄席や落語会で粋な着物のお作法 http://sakurabayukiko.net/2017/10/07/kimonogo/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=kimonogo Sat, 07 Oct 2017 06:41:25 +0000 http://sakurabayukiko.net/?p=506 浴衣をまだ畳んでもいないのに秋深し。空気が冷たくなり、すっかり着物は袷と衣替え。 汗の心配をしなくても良い秋冬は、着物でお出かけがしやすく、寄席や落語会にも浴衣か着物かなど悩まずに済む季節です。 しかし、ここで悩むのが「...

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浴衣をまだ畳んでもいないのに秋深し。空気が冷たくなり、すっかり着物は袷と衣替え。
汗の心配をしなくても良い秋冬は、着物でお出かけがしやすく、寄席や落語会にも浴衣か着物かなど悩まずに済む季節です。
しかし、ここで悩むのが「帯」やら「羽織」。浴衣の時はコスプレ感覚でも、着物となると構えてしまうという方が多いようです。
実は、浴衣よりもおしゃれの幅が広いのが着物。半衿や帯揚げ、帯締めなど小物のおしゃれが楽しい粋な装いで、寄席に落語会においでませ!




椅子席ならデコラティブな帯結びは御法度?

最近の寄席はすっかり椅子席となっています。落語会も、ホールで開催されることが多いようです。
そこでよく論争になるのが、和装の女性のマナー。歌舞伎やコンサート、お芝居でも、和服で観劇とは雅で良いものですが、椅子に座るとなると気になるのが帯です。訪問着にお太鼓結び、振袖にゴージャスな帯結びとなると、背もたれにもたれると帯が潰れてしまうため、浅く腰掛けることが多くなります。

これが、後ろの席の人が困ってしまう原因。浅く腰かけた人の頭は、後ろの人の視界をふさいでしまうのです。
ホールの椅子の間隔は、背もたれに背をのせている状態であることを前提に、後ろからも舞台が見えるように設計されています。

特に落語は、噺家が体全体を使った所作も見せる芸です。帯を潰さないようにと浅く腰掛けると、高座が見えない人が出てきてしまうのです。

そこで、寄席や落語会への着物は、控えめなお太鼓か半幅帯で出かけてみてはいかがでしょう。動きやすく、人の迷惑にもならず、こなれた感じを出すこともできます。
といいながら、櫻庭は昔、とある大師匠にご挨拶に行かねばならなかったため、訪問着にでかいお太鼓で末廣亭に行ったことがあります。その時は、お茶子さんの機転で桟敷席に案内されました。さすがのグッジョブです。

枕を使わないお太鼓結びや貝の口でラクチン寄席

どうしてもお太鼓しかできない、名古屋帯しかないのなら、少し小振りな作りにするとよいでしょう。帯枕も小振りなものを使います。櫻庭は帯枕をを使わずに、モスリンの紐だけでお太鼓を作ることもあります。もはやカルタ結びに近いお太鼓結びです。

着物に半幅帯もなかなか乙です。ちょうちょ結びなど子供っぽい結び方ではなく、カルタ結びや貝の口にすると玄人っぽい装いとなります。貝の口は半幅帯だとゆるみやすいので、帯締めでキリッと締めると、アクセントになって可愛らしくおしゃれに仕上がります。

着物はもっと気軽に着て良いはずなのですが、昭和の頃より着崩れは許されない文化になってしまいました。お太鼓やデコラティブな帯結びは、使用する紐の本数が何のプレイかと突っ込みたくなるほど多すぎて、着崩れしても自分で直すこともままなりません。
でも、着崩れしても直しやすい着方なら、いつでもきれいでこなれた着付けに。上質な半幅帯の貝の口結びは、寄席の雰囲気にも合い上々です。

便利な羽織と選び方

着物と帯に慣れたなら、羽織も楽しんでみましょう。
羽織は洋服でいうとカーディガンやジャケット感覚。殿方の羽織となるとやかましいところもあるのですが、女性の場合は自由に楽しめます。

流行は、絵羽の長羽織です。
丈が長く、膝下あたりまであります。しかし、リサイクルやアンティークで出回っているものは大正・昭和時代のものが多く、特に昭和30年〜40年代に作られたものは戦後の社会情勢やオイルショックやらの関係で丈が短くなっています。比較的長めの丈を選ぶと良いでしょう。

着物は柄と柄を合わせるという、洋服ならおしゃれ上級者の技を使います。
色の合わせ方や柄の合わせなどいろいろあるのですが、江戸小紋や少しおとなしい小柄な小紋に、大柄な羽織を合わせるのが一番簡単で失敗がありません。
大正のレトロな感じにしたければ、羽織を華やかなレトロ柄にして、帯揚げや半襟を羽織の色に合わせることでそれっぽくなります。

また、帯がうまく結べない、時間がなくて半幅帯をいい加減なカルタ結びにして出てきたという場合も、羽織は便利です。おはしょりなしの対丈で着た場合も、羽織を着てしまえば目立ちません。うちのはよく「羽織着ちゃえばわかんないよー」と、いい加減なことを言っています。大概正しいです。


秋は重ね着が楽しめる季節。着物も羽織や帯で、夏にはできないコーディネートを楽しみましょう。
最近は寄席にも着物姿が増えて、着物女子が可愛くて至福で眼福(感想がおっさん)。アンティークな着物にブーツを合わせても良いですね。着物で寄席に、おいでませ。




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夏の着物 http://sakurabayukiko.net/2017/09/17/natukimono/?utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=natukimono Sun, 17 Sep 2017 03:07:59 +0000 http://sakurabayukiko.net/?p=436 契約上のあれこれを弁護士さんにお願いすることになり、その対応に追われているうちに疲れ果て、仕事も残っているので新橋炉ばた寄席はパスした。うちの師匠が「台風来るからお客様来るかなあ」と心配そうに出て行くのを見送って、20日...

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契約上のあれこれを弁護士さんにお願いすることになり、その対応に追われているうちに疲れ果て、仕事も残っているので新橋炉ばた寄席はパスした。うちの師匠が「台風来るからお客様来るかなあ」と心配そうに出て行くのを見送って、20日の打ち合わせのためのビジネスと落語の関係についてまとめ始める。

集中力が続かないことで定評のある櫻庭なので、ふと夏の着物が気になる。
夏の間に着ていた着物は、畳まずにハンガーにかけて干している。汗ばんだ正絹のものは汗抜きをしているが、そろそろ丸洗いに出した方が良いだろう。洗い張りは無理だな。化繊はエマールで洗おう、などと考えながら佇む。



台風が過ぎたら、絽はお暇願うことになる。単衣の着物に衣替えだ。
絽の季節は短い。どれも、一度か2度しか着ることができなかった。お気に入りの小花柄は白地の正絹のため、天気が悪い日は汚れが怖くて着れない。今年は雨がちで、小花柄は一度しか出番がなかった。

単衣の着物を出してみると、これもまた種類は少ない。
少ないのだが、単衣の季節も短いため、これらもまた一度ずつしか着ないのだろう。
普段に着物を着ていける職場が増えれば良いのだが、ビジネス誌の取材では着物はまだまだ奇異に映る。
そんなわけで、落語関連か時代考証、創作の打ち合わせ時にしか着物にならない。今年の夏は加えて天気が芳しくなかったため、なおさら着物の出番は少なかった。

着物をハンガーに戻し、プロットやらデザイン仕事の続きやらやっていると、うちの師匠が帰ってきた。
「わー、しくじっちゃった」というので何をやらかしたのかと思えば、雨で鞄が濡れて中の着物が濡れたかもしれないという。出してみると、風呂敷はぐっしょり。包まれた着物もしっとりとしていた。

「化繊だから、ハンガーにかけとけば大丈夫だよ」というので、干す。高座に上がって噺をすると暑いので、まだ五所紋の絽だ。そろそろ単衣を持って行った方が良いだろう。

結局今年は着なかった、浴衣と並べて絽をかける。
台風のあとには、単衣の季節がやってくる。




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